(指揮者/高橋利幸HP 『徒然草』 2008.5.2*百一段* より)

 5月10日土曜日、アミュゼ柏クリスタルホールでの第一ステージは、大中恩の作品だ。作曲者については、今更申し上げることもないだろう。我が国の合唱作曲家の無論第一人者だ。

 演奏する曲は四曲。前半の二曲は女性の詩人の詩に曲をつけたものだ。「花すみれ」は浜野ふじ子さんの詩、「おもかげ」光井正子さんの詩による。女性ならではの情感を、これでもかとばかりの美しいメロディーで作曲されている。ある意味で女声合唱の極みといってもいいだろう。

 後半の二曲は、両方共に佐藤春夫さんの詩による・・・。「海の若者」「秋の女よ」ともに元は混声合唱曲だった。大中 恩さんにお願いしての女声合唱での編曲だ。混声合唱の魅力を少しも損なうことなく、女声の魅力をさらに際立たせてくれている。

 佐藤春夫さんの詩の多くは、短く、しかし、深い。この二曲もそうだ。短い言葉の中にどれほどの広がりと深さを秘めているのか、計り知れない。そして詩自体が感動を呼ぶのは、詩人としての生き様や、心の苦悩や精神の葛藤が描かれているからだ。言葉を技術で駆使するのではなく、魂の叫びとして詩に表す。詩から人間やその営み、人生を感じ取れるからこその説得力だ。

 このステージでのピアノは中村洋子さんが担当する。船橋女声合唱団のピアニストとして数々の伴奏を経験しているし、私の指揮でも一緒に何回もピアノ協奏曲を演奏している。ここでも中学校時代の教え子の成長した姿を見ることができる。嬉しい限りだ。本人として見ればこの四曲では物足りないかも知れない。技術に余裕がある分だけ、曲の表現に力を注いでくれるだろう。

 激しくぶつかり合う音の緊張感ではなく、女声の美しさや繊細さ、時によっては大胆な表現ができることへの証明のステージにしたい。もちろん聴いてくださる方には、癒しと心の安らぎと、ほんの少しの緊張感も味わってもらいたい。女性の表面の美しい感性から、情念とも思えるひたむきさまで、余すことなく四曲で表現することを目指すステージだ。




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ねむの花 第4回演奏会 「邦人作曲家四人展」

指揮者/高橋利幸HP

合唱組曲の指揮