(指揮者/高橋利幸HP 『徒然草』 2007.11.28*二十一段* より)

 秋の女よ(あきのおみなよ)という曲がある。晩秋の今頃に思い出す曲だ。

 11月の終わりの連休の頃、合唱で毎年3日間の合宿をやっていた。社会人が大部分の構成なのだがほとんどのメンバーが参加していた。場所は長野県、白樺湖のほとりだ。何回かは雪の中での合宿になった。この時期の合宿はスケジュールの全てが練習だったので雪は我々にはうれしい雪だった。外は雪、練習場のホールの中では、高田三郎の心の四季から雪の日にを合唱する。この完璧な情景はいま想像しても心がおどる。
 この合宿の時に利用させていただいたホテル朝霧では、音楽ホールにグランドピアノの設備があり、当時としては音楽の合宿にぴったりのホテルだった。白樺湖も今ほどには賑わいもなく、毎日仕事や学業におわれる身の団員にも心がリフレッシュできた環境だ。ホテル朝霧は、その後ご主人が亡くなり、一人で切り盛りをしていた奥さんも後を追うように亡くなられた。奥さんに亡くなる少し前の合宿の帰りにお土産に持っていけと渡されたのが一升瓶、ダイヤ菊という銘柄の日本酒だった。一升瓶を抱えて帰り、そのダイヤ菊がおいしかった。 まもなく、そのホテル朝霧は閉館された。その後何回か蓼科や車山にいったおりにホテルを見に行った。12年前に行った時は建物がまだあった。30年前に外階段で団員と写真をとったのだが、その外階段もそのままだった。時の流れにただ立ちつくすだけだった。 

 大中 恩の「秋の女よ」は、佐藤春夫の詩を合唱曲にしたもので私の好きな曲だ。佐藤春夫の詩は短い中に心を凝縮させており、簡潔の極みの詩といえよう。同じ意味で、「海の若者」という詩もあり、これにも大中 恩が曲をつけている。ともに混声4部合唱の曲だが、どうしても女声合唱でやってみたくなり厚かましくも大中さんにお願いしてみたら、快諾をいただきすぐに女声3部合唱に編曲をしてくださった。

 来年の女声合唱団ねむの花の演奏会では久しぶりにこの2曲をとりあげる。この曲の指揮は20年ぶりくらいになろうか。楽しみでもあるし、できるだけ多くの人にこの名曲を知ってもらいたいという願いも持っている。


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ねむの花 第4回演奏会 「邦人作曲家四人展」
心の歌・歌のこころ 「邦人作曲家四人展」

指揮者/高橋利幸HP


秋の女よ