(第3回演奏会プログラム より)

 女声合唱団と室内オーケストラの組み合わせによるジョイントコンサートは珍しい。女声合唱団「ねむの花」は白井市が練習拠点であり、「ちば室内管弦楽団」は主に習志野、船橋を練習会場に活動している。指揮者が同じという以外は共通項のない音楽団体だが、音楽芸術自体が作曲家と演奏家とそして聴衆という三つがそろってこそ成立することを思えば、演奏会を開きたいという思いは誰もが持つことだし、単独での手打ちの公演とは別にジョイントという形での合同演奏会を持つことは、声帯と楽器という表現手段が違うことも加味し、興味深い組み合わせでのコンサートともいえる。
 ねむの花のステージは、中田喜直の小品集と合唱組曲「美しい訣れの朝」で構成してみた。「ぶらんこ」から始まる五曲は、一曲ごとに少しずつ詩の持つ意味や曲の深さが増してゆく。それは、次のステージの「美しい訣れの朝」への導入の役割を果たすと同時に、作曲家・中田喜直の生涯の作品の流れを彷彿とさせる。「夏の思い出」や「雪の降る街を」などに代表される初期の作品から、後年の合唱組曲「蝶」や大曲「ダムサイト幻想」への作曲家としての哲学や円熟への道標さえをも連想することができるのである。
 「美しい訣れの朝」は、言うまでもなく人間の最も悲しく、また避けがたい厳然とした訣れを歌いあげる。生前、中田は自分の葬儀の時はフォーレのレクイエムを流してほしいと言っていた。そんなことも脳裏をよぎる。この組曲を境にピアノ伴奏の果たす役割が増し、単なる伴奏とは言えない技術的な難しさと表現力が要求される。
 管弦楽は、モーツァルトのピアノ協奏曲ニ短調がメインの曲となる。ほとんどの作品を長調で作曲したモーツァルトだが、わずかの短調の中の一曲がこの曲である。天才が天真爛漫に思うが儘に作曲をした他の作品群に比べれば、心奥に潜む苦渋や暗さを感じさせる曲である。レクイエムやト短調のシンフォニー40番とも共通する身を切るような表現をしなければ曲の本質に迫れない難曲といえる。
 さて、今回のプログラムも合唱とオケの合同演奏で幕を閉じる。このステージは肩のこらないシュトラウスのウインナワルツを中心に構成してみた。ウインナワルツだけが持つ、特有の訛とも言える2拍目だけが少しだけ前にでてやや長めに演奏するというウィーンフィルの演奏に近付ければ嬉しいのだがなかなか難しい。さらに合唱の人数とオケの人数が逆転しているのでバランスも取れないかもしれない。お客様にはお許しをいただき、楽しい雰囲気を味わってくだされば幸いである。
 オーケストラや合唱の演奏会がまだまだ少ない白井市でのこの演奏会が、市民の皆様の音楽鑑賞への渇望を少しでも癒す糧になることができればと願いながら、精一杯の演奏でお応えしたい。


ねむの花 HOME

指揮者/高橋利幸HP

プログラムについて

指揮者  高橋 利幸