(「邦人作曲家四人展」プログラム より)

 女声合唱団ねむの花の演奏会も四回目を迎えることになった。創立当初から邦人作品を取り上げること、それも邦人作曲家の合唱作品の中で、クラシックの音楽で言うところの「古典」として世に残したい曲を演奏していくことを目標に掲げてきた。現在、合唱曲を作られる作曲家の方が素晴らしい作品を数多く書かれていることは間違いない。曲の魅力があるのだから、コンクールや各合唱団の演奏会で必ずと言っていいほど取り上げられる機会が多いのも当然だ。自作を指揮される作曲家ももちろん居られる。その意味で才能の豊かな合唱作曲家の方にとって、作品が演奏される機会が多いということだけでも恵まれた状況にあると言っていいのだろう。
 反面、過去の名曲がその名の通りに「過去」の曲になることもありうることだ。邦楽音楽ではなく西洋音楽ということでの作曲家の大先達、滝廉太郎や山田耕筰の作品のように、時代や年代をこえて永遠に生き残る合唱曲があってもいいだろうし、あるべきだとも思う。
 「エリーゼのために」「小犬のワルツ」「乙女の祈り」のような小品から音楽を好きになる人がいるだろう。やがて、それが「運命」なり「未完成」なりの交響曲に関心を持つようになり、さらに音楽とのかかわりを広げていくというかたちは自然の流れでもある。
 ねむの花では、前回までは、その小品といえる作品を多く取り上げてきた。「ぶらんこ」「忘れな草」「犀川」「時無草」「貝殻」などだ。そして、その中に「愛の風船」「美しい訣れの朝」「虹」といった組曲を組み合わせてのプログラム構成だ。今回は、思い切って四人の作曲家の曲の雰囲気を伝えられる作品を選曲し、四人のピアニストとの共演でお聴かせすることとした。
 女声合唱は混声合唱、男声合唱とは違った魅力のある表現形態だ。同声の持つ清涼ともいえる響きの純度、女声ならではのきめ細やかな感情表現、優しい心情表現をすることが可能な形態だ。むろん、今あげた長所は短所にもなる。音域の狭さやダイナミックな表現の限界、音色の単調さなどがあげられる。それを補って余りあるのがピアノの存在だ。女声合唱ではピアノをもはや伴奏という言葉では表せない。むしろ言葉としては、ピアノと女声合唱との協奏曲と言ったほうがいいだろう。

 今回の演奏会では、合唱以上に重要な役割を果たすピアノの表現にも耳を傾けてほしい。ピアノという非常に機能の優れた楽器を一人で演奏するピアニストであることを思えば、ピアニストのいろいろな面での個性を感じることができるだろう。指揮者と合唱団、そしてピアニストの組み合わせが互いに刺激しあい、共鳴しあい、音楽の距離が近くなり、遠くなり、やがては一体化する、そんな演奏会が実現できれば、感動のひと時を舞台と客席の皆様とで共有することができる。この時の魂の触れ合いこそが、生の演奏会のまさに「醍醐味」といえるのではないか。そんな演奏を目指したい。



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指揮者/高橋利幸HP

プログラムについて

指揮者  高橋 利幸