(指揮者/高橋利幸HP『徒然草』2009.6.6*二百八十八段*より)


 6月21日の演奏会に備えての総練習を行った。今回の演奏会は「大中 恩・作品集」だ。当日のアンコールに一曲を、作曲者の大中恩先生に指揮をお願いした。快諾をいただき、本番前に一度指導を受けられることになった。曲は「花すみれ」・・・私が生まれるよりも前の作品だ。終戦を迎え作曲への意欲が旺盛だった時の作品の一つだそうだ。

 作曲者の曲作りへの動機や詩との出会い、詩人との出会い、表現したいことがご本人の口から語られる。貴重なひと時だった。想像するしかなかったことがわかる。その時の時代や交友関係も含めて曲にまつわるエピソードがどんどん聞ける。歌う団員も楽しそうだった。

 ご一緒された奥さまも紹介された。「恋をしていないと曲が書けない」とのこと。ご結婚が5年前、80歳の時・・・楽しそうに話されていた。30分の時間があっという間に過ぎた。85歳の歳を感じさせない若々しく精力的な指揮と指導に感服だ。

 一番若い団員は20歳、かけがえのない経験をしたのだと思う。「さっちゃん」「いぬのおまわりさん」の作曲家でもある。幼い時に耳にしたメロディーを作曲した人が目の前にいて指揮をしてくれる。その出会いは貴重だと思った。私だって仮にベートーヴェンが目の前に現れて自作の曲について話をし、指揮をしたとしたら・・・などと本当の夢を連想してしまった。

 偶然の出会いや神の配剤に心からの感謝をしなければならない。この「偶然」ということが、私にどれだけの喜びを与えてくれたか。感じるのは私なので「私」と書いたが、全部の人間が同じような偶然の出会いの中で生きているのだと思えば、身の回りのすべてのことに感謝をする気持ちや、人間を超えた大きな何かの「存在」を認識することができる。
 「生きている」という意識から「生かされている」という意識への転換だ。可能ならばもっと前にこの意識を持つことができたら・・・と思うが、それは仕方がない事だ。今になってそう思えることの僥倖をありがたいと思う。




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ねむの花 第5回演奏会 「女声合唱の世界 〜忘れられない名曲シリーズVol.1〜

指揮者/高橋利幸HP

花すみれ